現代やくざ 人斬り与太

大好きな作品。躍動感のあるカメラワーク・その場にいるかのようなカメラアングル、圧倒的な臨場感。洗練された構図・鮮やかな色使い・光と影の巧みな使い方、ギラついた映像美。弾け飛ぶブラックユーモア。役者達の名演技。そこに津島利章氏のギラギラした音楽が炸裂する。血生臭いリアリティ。伝統から外れた斬新さ。本作の半年後に公開される革命的やくざ映画「仁義なき戦い」の爆誕を臭わせる。後にバイオレンス映画の巨匠と呼ばれることとなる深作欣二監督と菅原文太の黄金コンビが送る、革命(仁義なき戦い）への足掛かりとなり、新たなるムーブメント(実録路線)の発生へと繋がる、やくざ映画の表街道(伝統・常識)から逸れた裏街道を指し示した、やくざ映画の新たな道しるべ。その後の革命へと繋がるこの道を迷わずに追及して行った深作監督はやはり天才。斬新な描写と画の美しさに満ちた傑作。ラストは涙無しには見られない。この黄金コンビに脚本家の笠原和夫氏が合流して「仁義なき戦い」による革命の時が来る。本作は正しく革命前夜の胸騒ぎのような傑作。

余談 : 銃を向けられた時の小林稔侍の🥶な表情が素晴らしい。

仁義なき戦いでの主人公は、筋が通っていて、ややいい奴ですが、こっちの映画の主人公はもうちょっとどうしようもない奴です。こんな感じのやつがヤクザにはいっぱいいて、監督はそういう奴を主人公にして一本撮りたかったのではないでしょうか。
ヤクザ映画をこのんで撮る監督は深作欣二の他にもたくさんいますが、この作品は深作ならではの感覚で描かれていて、いい味を出しています。是非、ご覧下さい。