オフィサー・アンド・スパイ

軍の隠蔽工作に対する糾弾はわかるが、ユダヤ人に対する差別は全く払拭されていないと思った。
しかし、フランスはこの約40年後にナチスと戦う。
フランスにも反ユダヤ主義は残っていたのだと思う。
サスペスフルって言うが、それほどでもなかった。同じ様な顔しているので、相関関係が分かりづらかった。また、眠かった。

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原作者であるロバート・ハリスとは3回目の脚本のコラボということで．．．

映画の冒頭、ルイ15世が建てたエコール・ミリテール(フランス軍学校)の広場で大勢の陸軍兵士が見守る中、ドレフュス大尉が見せしめのように肩章や飾緒を付ける陸軍の証であるボタンもはぎ取られ、サーベルも真っ二つにへし折られるシーンを見て、その屈辱的な演出はロマン・ポランスキー監督らしい映画の導入部での一場面に仕上げていた。このシーンがあったからこそこの話の流れが一見悪いように見えても彼流のち密な演出が見ている者の心を捉えて夢中にさせる業なのかも知れない。

ところでアンリ・シャリエールという名前は知らなくても胸に蝶の入れ墨をした実録もので今は亡きスティーブ・マックイーンが主演を務めた『パピヨン』はご存じかも知れないって．．．　知っているならあたしを含めて、あなたはいい年をぶっこいておられる。
ハンセン病患者の村に逃げ込んだパピヨンをその村の長が吸っていた葉巻を彼に手渡すシーンなど差別的なシーンのテンコ盛りなオリジナルの『パピヨン』からするとリメイク版はそんなシーンをカットしてしまっていたので味の無いスープのようでどうでもよくなり、それとダスティン・ホフマンの代わりはラミ・マレックでは無理ですから、何か？
本題のドレフュス事件の騒動の主人公、ドレフュス大尉が実際にこの忌まわしいパピヨンも投獄されたDevil's Islandいわゆる悪魔島へ結果、送られてしまう。

Desvernine: "Apollo." Is that Greek?
Picquart: No, it's a Roman copy. The original is lost.
Desvernine: You mean it's a fake.
Picquart: No, it's a copy. It's different.
ピカール中佐とドレフュス大尉の素行調査依頼をした警備担当のデスヴァーニンとの会話から本作『オフィサー・アンド・スパイ』におけるピカール中佐の博識で物の見方の公平性なところや本題のフェイクということに関連付けた暗喩にもなっている。だからドレフュス大尉を中心にストリーが展開すると思っていると彼の無実を究明するピカール中佐の1人称的な描き方を本作はしている。

"One can show its absolute relevance to what is happening in
today's world," Polanski said back then. "The age-old spectacle
of the witch hunt on a minority group, security paranoia, secret
military tribunals, out-of-control intelligence agencies,
governmental cover-ups and a rabid press."(監督のお言葉)
元々ポーランドで撮影され、しかもハリウッド俳優を起用した英語版を撮るつもりが、アメリカからのポーランドへの引き渡し要求や減税の為にフランスで撮影されたいきさつやVFXに約200万ドルを費やしたとか言われているが．．．　それよりも19世紀も終わりを告げようとするフランスのしかも内部告発の暗い内容からは程遠い「新しい芸術」を意味するアール・ヌーヴォーの調度品やファッション、それと鮮やかな色彩の軍服など耽美的で洗練された様式をどのように集めたのかが分からないほど徹底した再現によって芸術的に優れていると言え、しかも新古典主義の建築様式も威厳という言葉のメタファーとして登場している。

He told the French writer Pascal Bruckner: “In the story, I
sometimes find moments I have experienced myself, I can
see the same determination to deny the facts and condemn
me for things I have not done. Most of the people who harass
me do not know me and know nothing about the case... I
must admit that I am familiar with many of the workings of
the apparatus of persecution shown in the film, and that has
clearly inspired me.”　反ユダヤ主義からすると．．．？
原作は先ほども述べたようにポランスキー監督と共同脚本家で友人でもあるロバート・ハリスなんだけどこの事件が明るみとなったきっかけは映画化もされた『居酒屋』で知られるエミール・ゾラの "J’accuse" という題名の新聞紙に載せた公開状とされている。
※余談として、映画『居酒屋』のラスト、娘が赤いリボンではしゃいでいるシーンが白黒映画なのに個人的にはリボンだけが赤く色がついていたような曖昧な記憶だけがある。
それは別として、来年で90才になるポランスキー監督の人生に付きまとう過去に起こした罪についてフランス対外貿易・誘致担当大臣フランク・リースターがこんなことを述べている。「ポランスキーの過去の行動を今後考慮に入れるべきだ。」と述べたあとに「作品は、それがどんなに素晴らしいものであっても、作者の起こした間違いを許すつもりはない。才能は軽減する状況ではなく、また天才であることが、免責を保証するものでもない。」
それとセザール賞にノミネートされたとき、女性グループは、フランスの映画アカデミーが「逃亡中の虐待者でありレイプ犯」を称賛していると述べている。またフランスのフェミニストグループがいくつかの映画館に侵入または封鎖し、一部の場所で映画がキャンセルもされている。だからセザール賞に監督は出席はしていない。オスカーとは別の意味で彼が何かの賞を受賞するとひと悶着が起こる定めのようにも感じる。

ワルシャワ・ゲットーのユダヤ人生存者についての2002年の「戦場のピアニスト」以来のシオニストの色彩の濃ゆいフィルムとなっているけど前半のピカール中佐の取り組み方の軍律を重んじ、公平性を実行する彼の態度や作品自体が歴史に忠実で落ち着いた雰囲気の中、ピュアーに描かれていたものが後半になって、より脚色された演出になっていくのが、何故かしら違和感を感じてしまう。そんな映画と個人的には思ってもいるし、捉えてもいる。