椿三十郎（1962）

先日の用心棒に続いての鑑賞。
笑いありのエンターテイメント。やっぱり三船、カッコよし。

駄作ではないんだけど、前作が素晴らしい上に主人公が同じなので、差が目立つ。椿が若侍を助ける理由もピンと来ない。母娘の意見の鋭さに辛うじて面白味が。やはり宮川一夫は偉大なのか。

用心棒は観ていたのだがこちらはまだだったのでデマンドで。

いやあ面白い！
三十郎というスーパーキャラクター。ギラギラとしつつ飄々。これは三船にしか演じれない。そんなキャラ立ち主人公を中心に、敵陣との頭脳戦でもあり、喜劇要素もあり、痺れる立ち回りもありと娯楽性十二分。96分という長さの中にエンタメ要素がこれでもかと詰め込まれている。

役者も皆良く、仲代達矢のぎょろぎょろした目、まだ青臭い加山雄三、顔だけで印象深い田中邦衛など見所多数。

娯楽作に徹した黒澤もやはり凄いということを思い知った一作です。

ネタバレ！ クリックして本文を読む
「用心棒」の姉妹編。

DVDで3回目の鑑賞。

原作(山本周五郎「日日平安」)は未読です。

藩の不正を暴こうと集まった9人の若侍たち。少々浅慮な彼らをひょっこり現れた浪人・三十郎が導いて、あっと驚く奇策と、ハッと目の覚めるような剣捌きを駆使して、悪と戦う様を描いた痛快エンターテインメント時代劇。

名前を訊ねられたら、庭に咲く椿の花を見て、「椿三十郎。もうすぐ“四十”郎だがな」―。すぐに嘘だと分かるし、本当の名前を名乗りたくないという意思がハッキリと分かる。洒落っ気もあって、何よりセンスがいい！
正義に燃えて、ろくに思案もせずに突っ走ろうとする若者に待ったを掛け、「見ちゃいられねぇ！」とばかりに上手く先導しました。彼らを見事にコントロールして、敵を騙して懐に入り込み、全てを掌の上で転がすという大胆さ…。
言うことがいちいち的を射ているために、反論しようにも相手はぐうの音も出ない…。そしてことごとくその通りになっていく。もはや着いて行かざるを得ません(笑)

ハラハラ・ドキドキさせてくれるストーリーは何回観ても楽しいし、何より抜群の面白さ。全然飽きが来ません。
スピーディーな展開ながらも一切の破綻が無く、よく練られた脚本が奏でるストーリーテリングが圧巻でした。
椿屋敷で虜になってしまった三十郎が機転を利かせて、椿の花を使った合図を逆手に敵を罠に嵌めるシーンが痛快の極み！
スリルとアクション、ユーモアのバランスとが絶妙な塩梅で配分されています。これぞ娯楽だなぁ、と…。

クライマックス、室戸半兵衛(仲代達矢)との決闘では、音の無い睨み合いから壮絶な血飛沫を伴う刹那の決着という、“静と動”の演出が秀逸の極み…。大量の流血を伴いながら、たったの一瞬で散ってしまった命の衝撃に息を呑みました。

――

ちゃんとした刀は鞘に入っている…。
心に刻もう！

【余談】
加山雄三と田中邦衛の口論シーンは、さながら“若大将”対“青大将”？(笑)

このストーリーには原作があって山本周五郎の日々平安という物語だ.主人公は非常に地味な男で最初黒澤明はこの原作に忠実な脚本を書いた.しかし映画が地味すぎるものになってコケるだろうってことで却下された。そこで三船敏郎を使って派手なモンにしようとして考えているうちに用心棒の続編みたいになってしまったのだと言う
この映画は日本では非常にメジャーだが残念ながら海外ではあまり有名ではないそうだ.実にもったいないことである.映画の出来としては決して用心棒に引けを取らない.それどころか脚本の方は用心棒よりもよくかけている. 特に若侍の椿三十郎に対する不信感みたいなものがどう盛り上がりどう解消されていくかっていうところが綺麗なドラマになってると思った.
この映画を見る時に、絶対に知っていてはいけないのがそのクライマックスだ.下手するとジャケットにそのクライマックスの写真が載ってたりする。それは、とんでもない間違いだと思う.私が若い頃にはまだレンタルビデオというものがなく、見たい映画はテレビで放映されるのを待つしかなかった.だからどうしてもその内容が知りたければ映画批評の本を買ってくるとか映画脚本の本を図書館で借りてくるしかなかった.だから私は事前にこの作品のクライマックスがどうなるか知っていたのだ.とても残念なことである.