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バッド・ルーテナント 刑事とドラッグとキリスト총 (2) 개의 댓글
監督はアベル・フェラーラ、主演のL.Tは『レザボア・ドッグス』や『ナショナル・トレジャーシリーズ』に出演したハーヴェイ・カイテル。脚本を担当したゾーイ・ルンドは皮肉にも公開された7年後に薬物中毒で亡くなってしまう。
L.Tは息子たちに対して厳格な父親像を見せているが、徐々に本当の姿を現してくる。実は刑事でありながらも薬物中毒で、刑事仲間と野球賭博をしている。喧嘩の仲裁では銃を撃ち、若い女に卑猥な行為をする。町は裕福な所もあるが主人公は闇の部分で暗躍する。友人の刑事も善意は欠けている。まさしく「悪い刑事」を体現しているのがL.Tだろう。野球ネタはハリウッド映画では定番だ。副題に野球をつけてもおかしくないぐらいくどく出てくる。あまり興味がない人からすると注意深く見聞きしないとストーリーから置いていかれそうだ。
この作品の副題に「刑事」「ドラッグ」「キリスト」の三つの言葉が付く。敬虔なキリスト教徒でありながらも神にたてつく行為でしか自分の存在を証明できない悲しき信者でもある。家族写真の上でドラッグを吸うシーンなどは胸が締め付けられる。修道女がレイプされた事件が起きると、L.Tとキリストとの対峙を予兆が始まる。L.Tは友人にも止められるほど危険な賭けを挑む。売人から薬の売り上げを回収して帰るシーン、薬物の影響と危機感からかL.Tは恐怖と孤独におぼれていく。L.Tは修道女に犯人を自分だけ見つけたら抹殺をすると語るも修道女は慈悲深くそれを断る。これはL.Tにとっては予想外の答えだった。彼は自分の弱さ暗に償いたかったのだ。しかし相手は神に仕える一人の女性でしかない。修道女が去りL.Tが振り返るとイエス・キリストが姿を現す。L.Tは懺悔と救済を求める。後ろに神、前にキリスト、もう逃げ場などない、すべてを洗いざらい吐き出す。L.Tは犯人を見つけるとこれまでにないぐらい落ち着いて野球を見ながらドラッグを吸う。しかし、犯人を捕まえずに犯人を町から追い出す。罪人の救済はキリスト教の教えにあるがもちろん事件の解決や犯罪に対する処置とは違う。しかし、最後に刑事として罰を科して、同じ罪人として許した。これは修道女が望む最善の結果でもあったのかもしれない。そんなL.Tの最後は死であるのは納得する。もはや、死は不可避だったろう。最後、少しながらもいい刑事になれたのではないだろうか。良い刑事、悪い刑事という定番のシチュエーションはあるが、自らが表裏一体のように二役するストーリーは珍しい。しかし、この程度の償いでは悪から抜け出せない。だが必要悪としての役割は果たそうとしたのではないだろうか。他人の罪を被る、まさしく、キリストの伝道と同じシチュエーションと言えるだろう。本人としては一人の人間としての救済を求めていたように見えるが、むなしいことに他人からは刑事としての側面しかL.Tを知らない。
しかし、普段は無関心な信者がここぞという時にすがる姿は正直自分にも思い当たる節がある。日本人は宗教に対してよく言えばミーハーだが、やや宗教を都合よくとらえているところがある。無宗教だが無神論ではないのは国が違えば侮辱に値するだろう。主旨と違うが、自分には宗教を見直す機会となってしまった。
悪夢さながらの内容。不良刑事が落ちて落ちて落ちて奈落の底まで落ちて行って、たどり着いた絶望の淵で神に救いを求めるが...
兎にも角にもハーヴェイ・カイテルの怪演が凄まじすぎる。ドラッグとギャンブルに溺れて泥沼にハマっていく不良刑事を演じているのだが、ドン底まで落ちていき精神崩壊寸前まで追い込まれていくその姿は、リアルにギャンブルで負け込んで本物のドラッグをキメて演技しているとしか思えないくらい自然体な演技... オーバードーズしているシーンなんて到底演技には見えない... ハーヴェイ・カイテル恐るべし... これをシラフで演技しているというのならもの凄いことだぞ...
1時間半の泥沼体験。もう暫くは観たくないけど、時々観たくなる地味に好きな作品。