「ダークナイト」「インターステラー」のクリストファー・ノーラン監督が、初めて実話をもとに描く戦争映画。史上最大の救出作戦と言われる「ダイナモ作戦」が展開された、第2次世界大戦のダンケルクの戦いを描く。ポーランドを侵攻し、そこから北フランスまで勢力を広げたドイツ軍は、戦車や航空機といった新兵器を用いた電撃的な戦いで英仏連合軍をフランス北部のダンケルクへと追い詰めていく。この事態に危機感を抱いたイギリス首相のチャーチルは、ダンケルクに取り残された兵士40万人の救出を命じ、1940年5月26日、軍艦はもとより、民間の船舶も総動員したダイナモ作戦が発動。戦局は奇跡的な展開を迎えることとなる。出演は、今作が映画デビュー作となる新人のフィオン・ホワイトヘッドのほか、ノーラン作品常連のトム・ハーディやキリアン・マーフィ、「ブリッジ・オブ・スパイ」でアカデミー助演男優賞を受賞したマーク・ライランス、ケネス・ブラナー、「ワン・ダイレクション」のハリー・スタイルズらが顔をそろえた。第90回アカデミー賞では作品賞ほか8部門で候補にあがり、編集、音響編集、録音の3部門で受賞している。2020年7月、クリストファー・ノーラン監督の「TENET テネット」公開にあわせ、IMAX、4D、Dolby Cinemaでリバイバル公開。
ダンケルク총 (20) 개의 댓글
結論から先に言ってしまうと、「最高!」でした。(IMAX環境に限る)
それはフィルムに拘る映像作家クリストファー・ノーランの覚悟を感じたからである。
映像は全編に渡って素晴らしいが、特にラストのスピットファイヤの滑空が画面一杯に映される場面での映像の美しさは、映画史上に残る素晴らしさで最高!
戦争映画大作の定番だと複数のキャストと役柄のグランドホテル形式で描くのだが、登場人物の立ち位置を大まかに3組に分けて時間軸を交差させながら、同じシュチュエーションをそれぞれの目線で描く手法は、一見混乱し易いが、実はシンプルな反芻て成り立っている物語。
シンプルなのは、背景に現れていて、30万人規模の撤退作戦にしては、人や船や飛行機の数も明らかに少なくないが、緻密に配置してから画面構成をしているので、あまり気にならない。
以前からいわゆるCGやデジタル撮影に頼らないで、コントロールの難しいフィルム撮影にこだわってきたスタンスは、フィルム特有の色・質感などの再現性と独特の空気感スクリーンに映し出されている。
もちろん上映方式は、デジタルではなくデジタルデータに落とし込むのだが、IMAXレーザーの先鋭度に寄ってポジフィルムと遜色無い再現性があるのではと思う。
IMAX専用音響の強烈さも上々で、カチカチとアナログ時計の音で緊張感を煽る音楽と共に、銃弾や爆撃やか風切る航空機のエンジン音と臨場感が溢れ終始、緊張感を持続させる。
気になるところは、切り返しカットで特に人物の照明の光の方向や調子がチョイチョイと変わったり、色温度やカラーバランスに違いが見受けられる場面があるが、前者は、スケジュール都合によって生じるので仕方ないが、後者はプリントやデジタル変換時に補正可能だと思う。ただ監督のノーランはそれも含めてのフイルム撮影の特徴をスクリーンに刻みたいと思っているのかもしれない。
デジタル映画撮影についてのドキュメンタリー『サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ』でもノーランは、使える限りフイルム撮影に拘りたいと発言していた。逆に10才近く年上のデビッド・フィンチャーは、もうフイルム撮影に何もメリットがないと言っていたのとは対象的だった。
ともかく、今作はIMAX環境に限ると思うのは、映像と音響の効果が最大限に発揮できる環境を推奨している体感性の強い作品だから。
自宅でホームシアターを組んでも、映画館自体の広さも含めた物理的な理想空間は個人的では、とても再現が難しいと思う。
結論を言うと、別物、まったくの別物だ。フィルム時代のIMAXを知る人は、デジタルIMAXであの時の衝撃を味わえず歯痒い思いをしたことがあると思うが、デジタル上映とはいえフィルムのIMAXの持っていた広大な空間の広がりを、三度目のIMAXレーザーで初めて感じた。
大仰に思えた音響もこの巨大なスケールだとピタリとハマる。ストーリー的な不満は解消されたわけではないが、IMAXレーザーの「ダンケルク」、観られるうちにぜひ一度とお勧めしたい。最安だと東京からだと深夜バスで平日片道約3000円。その価値はあると思います。
ドイツ軍の包囲網からの命からがらの撤退戦なのに肝心のドイツ軍の姿が全く映らないという実録戦争映画としては奇抜で斬新な試みだが、代わって戦闘の緊迫感を音で伝えようとしているのが本作の特徴。
アカデミー賞で音響部門の賞を複数取っただけあって腹の底からズンズンと響いてくるような戦闘音などは、その辺のスペクタル映画とは一線を画す。
映像的には、燃料が尽きたスピットファイアが黄昏時の海岸線をゆっくりと滑空している様が美しくて印象的だった。
終盤、帰還した兵士達に毛布を配っている盲目の老人が一人だけ顔に触れて自分の息子かどうかを確認していたシーンも「戦争とは何ぞや?」を問い掛ける、なかなか示唆に富んだ深いメッセージ。
キャストの中では、ボルトン中佐(ケネス・ブラナー)が切迫した場面でも常に大局観を見失わないリーダー然としていてカッコ良かった。
ただ、陸海空それぞれの作戦がごちゃごちゃになった展開は見づらいし、分かりにくいのがマイナスかな。
もぬけの殻となったダンケルクの市街地を抜け、海岸線がスクリーンいっぱいに広がった瞬間、これまでに感じたことのない映像の深遠さが胸を貫いた。そしてここから陸・海・空の3つのタイムラインを駆使したダンケルクの撤退作戦が展開するなんて誰が予測しえただろう。
さすがノーラン作品には「時間」という概念が密接に関わってくる。『インセプション』と同じく3つの異なった時間の尺度を展開させる手法には舌を巻くばかり。その結果、各々のテリトリーが交錯する「点」にて運命がスパークするわけだが、この語り口はもはや戦争アクションを超えた、緻密なるサスペンスの域と言えるだろう。
ちなみに、本作ではトム・ハーディが操縦する戦闘機内に響く無線音声の中でマイケル・ケインのカメオ出演がある。かつてケインが『空軍大戦略』で空を滑空していた映画史を押さえておくと、ノーランの密かなこだわりをさらに深く咀嚼することができるはずだ。