影武者

名前だけで撮って評価されたような最低の時代劇です。
評価する人も権威にひれふした、ということです。

仲代のメイクと監督のスタイルからか、どうしても「乱」とごちゃごちゃになります。

中学のときみたのだけと、すげ〜重かった、というか、ガツンときた。
クロサワにはまったきっかけです。
父上、連れて行ってくれてありがとう。

一番レビューに困るタイプの「何がだめだったのかはよくわからないけどなんとなく面白くない」系の作品。長回しフィックスのファーストカットには引き込まれたのですが…。

仲代達矢が『天国と地獄』のあの人と同じ人に見えないのが(年数経ってるとはいえ)すごい。のだけど、やっぱり(こんなこと言っても仕方ないのだけど)三船敏郎の引力には及ばない感じもする…。脇を固める俳優陣も素晴らしかったんだけど、やはり主演の物足りなさは如何ともし難い。話も後味が悪いのは嫌いじゃないのだけど、なんだかなあという感じ。

正直言ってモノクロからカラー・フイルムになってからの黒澤明作品は、ずっと飢餓状態にあった色彩への渇望に、自身が溺れてしまった感が強い。
その結果、演出が雑となり、以前のように登場人物を深層部まで掘り下げて描くことはなくなったように思う。
それは何も黒澤だけの責任ではなく、演じる役者の質の低下にも原因があるのかもしれないれけど。

黒澤が描く絵コンテは、もう完全にそのクオリティーを越えてしまって絵画の域でした。
彼はその絵コンテを、忠実に映像化してみせただけなのです。
映画製作の準備段階で彼は満足してしまったのではないかとさえ思えてしまう。
ま、でもなんやかんや言うても勝新太郎の豪快で大胆な演技を見れなかったのが一番の心残りですね。
返す返すも勝新の途中降板は痛かった。
彼の持つダイナミックな個性が 、豪放磊落な猛将、武田信玄に凄くマッチしていたはずなのに。